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気血津液 [東洋医学の基礎知識]
(2)気血津液の虚証(気血津液の不足による病証) 気血津液の虚証は、気血津液のどれかまたは複数のものが不足して起こりますが、一般に見られるものには、「気虚証」「血虚証」「気血両虚証」「陽虚証」「陰虚証」「気陰両虚証」の6つがあります。 津液の不足である「津液虧損証」というものもありますが、これはすぐに陰虚証に移行してしまうため、患者さんが病気を意識する段階では、陰虚証になってしまっていることが大半です。 「気虚証」「血虚証」「気血両虚証」「陽虚証」「陰虚証」は、生理のところでも紹介したように、それぞれ「気の不足」「血の不足」「気と血両方の不足」「陽気の不足」「陰血または陰液の不足」によって起こる病証です。「気陰両虚証」は生理のところでは紹介がなかった病証ですが、気と陰液が不足した病証です。 (3)気血津液の虚証が起きる原因 気血津液の不足が起こる原因には、過労(「労倦」という)を中心に、ほかに先天的な虚弱(「先天不足」という)・老化・病気の慢性化(「久病」という)によって起こる消耗などがあります。また、ダイエットの行き過ぎなど、気血を作る原料である飲食物の摂取不足も原因になります。 「労倦」には、主に気を消耗しやすい肉体的な疲労(「労力過度」という)・心血を消耗しやすい精神的な疲労(「労神過度」という)・腎の精気を消耗しやすい性行為による疲労(「房事過度」という)があります。 肉体労働は、人体の活動源である気を消耗するため、労力過度になると気の不足である「気虚」を起こします。精神活動は、精神の栄養源である血を消耗して「血虚」を起こします。ただしこの血虚は、精神活動の中枢である「神明=しんめい」を栄養する心の血に集中して起こります。一般の血虚は、ケガや婦人の生理の異常などによる直接的な出血や、上記にある飲食物の摂取不足によるものが大半です。 房事過度・先天不足・老化はいずれも、腎の精気の不足(「腎虚」という)につながります。腎虚については、後で臓腑の病証を学ぶ際に詳しく見ていきます。 一般に、急性病の初期段階では激しい症状が現れますが、これは病邪が旺盛であるためと考えます。しかし「久病」になると、次第に邪気が正気を消耗させるため、それぞれの邪気に対応する気血津液のどれかの不足が進んで、気血津液の虚証が現れます。 以上のような原因で気血津液の虚証が起きますが、どれが不足した虚証なのかを判断するには、次に学ぶ「気血津液の虚証にみられる症状」を確認しなくてはなりません。また、気や血がどの程度消耗すれば気虚や血虚になるのかについては、個体差があります。一律に、何時間労働すれば気虚になるというものではなく、そうした症状のいくつかが出始めた段階で、過労なのだと判断することができるのです。したがって、病気の前兆を察知して、未病を治療するうえでも、次に学ぶ症状のいくつかは覚えておきたいものです。 (4)気血津液の虚証にみられる症状
病証 |
症 状 |
舌 |
1)気虚証 |
①倦怠感、②乏力、③気短、④懶言、⑤自汗、⑥嗜睡 | 舌質淡舌体胖大有歯痕 |
2)陽虚証 |
気虚の症状+ ①顔面蒼白、②形寒肢冷、③畏寒、④喜熱飲食、⑤小便清長 |
舌質淡 舌苔白 |
3)血虚証 |
①面色無華、②唇や爪の色が淡い、③眩暈、④心悸、⑤不眠、⑥肌や髪の潤いがない、⑦大便乾結、 ⑧経遅・閉経、⑨身体消痩 |
舌質淡 舌体痩薄・裂紋 |
4)陰虚証 |
血虚の症状の一部+ ①五心煩熱、②盗汗、③夜間潮熱、④口乾、⑤頬紅、⑥小便短赤 |
舌質紅、舌苔無 舌体痩薄 |
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