学習コーナー
癌(悪性腫瘍) [貴方の病気のタイプ]
1-4 総論④
「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」の必要性とその方法
癌治療の基本対策が「扶正袪邪」であること、「扶正」が正気を扶助すること、「袪邪」が病邪や気血津液の阻滞を取り除くことなのはすでに紹介しましたので、ここではその必要性、および扶正と袪邪の組み合わせについて説明を加えることにします。
癌になると、それを引き起こした病邪が次第に正気を蝕んでいき、正気が消耗すると益々癌が進行しやすくなるという悪循環に陥ります。そのため、扶正しながら袪邪をするという二段構えの治療を必要とします。どちらかを切り離して、一方のみで治療することはほとんどありません。
ただし、扶正と袪邪の割合は、それぞれの人によって異なります。一般的には、まだ早期で体力の消耗が比較的少ない人では、袪邪を多くし、扶正を少なめにします。逆に、末期の段階や、手術や抗がん剤治療などの影響で、体力が落ちている人の場合には、扶正のほうを多めにします。
日本で癌を発症した人の大半は現代医学の治療も受けていますので、この点についての中医学的な視点も紹介しておきましょう。手術や抗がん剤治療および放射線治療などは、癌を取り除いたり、攻撃をしてこれを叩いたりするものですから、中医学的にみれば「袪邪」に相当します。そればかりか、手術では転移を恐れて、癌細胞でない通常の細胞をも含めて臓器ごと切り取ってしまいます。抗がん剤も正常な細胞にまでダメージを与えます。つまり、これらの治療は、袪邪もするが、正気も損ねてしまう可能性が高くなりますので、中医学的視点から言えば、より強い扶正が必要になるのです。
手術などで大量出血や術後の貧血などで輸血をする場合や、食事が取れないときなどの栄養剤の点滴は扶正の範疇に入りますが、これらは入院時に行われるのが一般で、退院後に自分で正気を高めていく段階での手立てとしては、十分なものがありません。
中醫堂に治療を求めておいでになる方には、その人の治療全般を考慮して、場合によって袪邪は病院での治療にまかせることもあります。その場合は、中医学では扶正のみを行うことになります。
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