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癌(悪性腫瘍) [貴方の病気のタイプ]


-3 総論③

中医学(東洋医学)による、癌の基本対策とは?

本格的に漢方薬や鍼灸で癌を治療するには、現代医学の診断だけに頼って行うのではなく、中医学の見立て(弁証)を中心にして、これに現代医学の診断を組み入れるやり方のほうが、高い有効性を得ることができます。そこで、今回は中医学による癌の基本対策についてお話します。

 

中医学による癌治療の基本方針は「扶正袪邪(ふせいきょじゃ)」です。扶正袪邪というのは、「扶正」すなわち正気を扶助することと、「袪邪」すなわち病邪を去除することの2つを合わせて行う治療方針のことです。患者の状態を見極めて、人によっては扶正が多めで袪邪は少なめという場合も、反対に袪邪が多めで扶正は少なめという場合もありますが、必ず両方を組み合わせなければいけません。こうした考えなしに、○○番の漢方エキスがよいとか、△△番の漢方エキスがよいとかいうのは、全くナンセンスといえるのです。

 

 

癌の発生に関係する「正気」と「病邪」とは?

正気というのは、体内にある病邪に対抗する物質の総称です。皆さんに分りやすく表現するとすれば「免疫力のもとになる物質」「抵抗力のもとになる物質」となります。具体的にはどんなものかというと、人体の組成成分である気血津液や精から構成される物質です。しかし、病邪の種類によって、組成成分の何が対抗の中心になるのかが異なるため、決まった物質とすることはできません。例えば、風邪に対する正気は血がその中核を成しますし、湿邪に対する正気は脾気がその中核を成します。

病邪とは、体外から侵入する外邪(「六淫」といわれる)に属す風邪・寒邪・湿邪・暑邪・燥邪・熱邪(火邪)と、これに準じる体内に発生する病邪(「内生の五邪」といわれる)である内風・内寒・内湿・内燥・内熱を指します。これらのうち、腫瘍の発生と特に関わりの強いのが、内外の熱邪・寒邪および湿邪です。 

 

中医学では、古典の中で、腫瘍のことを「岩」「瘤=こぶ」などを用いて表現してきたように、白血病など一部のものを除いて、癌を「かたまり」と考えます。一般に、正気不足によって代謝力が落ちているところに、病邪がつけこんで影響を及ぼし、これによって体内を流れる気血津液などの物質が阻滞して、徐々に「かたまり」となったものが腫瘍です。

気血津液のうち、気の代謝力が障害されてかたまったものが「気滞」、血の代謝力が障害されてかたまったものが「瘀血」、津液の代謝力が障害されてかたまったものが「痰」です。寒邪はどの物質に対しても冷えによる循行障害を促すため発生原因になりやすく、熱邪は腫れを増長するため癌の進行を促します。湿邪は同類の痰の形成に直接影響します。このほか、ストレスは気滞を形成しやすく、さらに気の滞りは血や津液の滞りも併発しやすくします。

 

まとめると、正気不足で抵抗力や代謝力が落ちているところに、病邪の侵入や、生活習慣の不摂生による「内生の五邪」の発生があり、これらが気血津液を滞らせると「かたまり」を作ってしまいます。このうち毒性の強いものが癌だと考えてください。気血津液は、本来人体に有用な物質なのですが、阻滞すると癌の素にもなります。河川で例えるなら、上流の泉の水はきれいで飲めますが、下流の流れの悪い水は飲めない上に、淀むとヘドロが湧くのと一緒です。言ってみれば、癌も体内に湧いたヘドロのようなものなのです。

 

 

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