学習コーナー
癌(悪性腫瘍) [貴方の病気のタイプ]
1-2 総論②
漢方薬や鍼灸を使った現代医学的な“癌治療”とは?
癌治療に漢方薬や鍼灸治療を利用すると、一般の人は「東洋医学の治療をしている」と考えます。しかし、厳密には東洋医学ではなく、現代医学的な考え方の中で、単に鍼の刺激効果や漢方成分を利用している場合も少なくありません。この場合は、治療の主体はあくまで現代医学であり、東洋医学はその補完的な意味で使われるだけで、癌そのものへの対応でないことが大半です。ですから、皆さんが、後で説明する本来の東洋医学による治療効果を求めているのであれば、その医療の提供者に、どういった目的で使用するのかよく聞いてみることをお勧めします。
もう少し詳しくお話しすると、現代医学的な考え方の中で、鍼の刺激効果を利用する場合は、疼痛の緩和や、QOLといわれる生活の質の改善を目的とします。また、漢方薬を利用する場合は、体力の回復による免疫力の増強を目的とするほか、悪心嘔吐や脱毛などの抗がん剤治療や放射線治療による副作用の軽減にも使うことがあります。
例えば、医師の間では「補中益気湯」は免疫力をアップさせやすい漢方薬と認識されています。それは、この薬の中の主要な生薬である「黄耆=オウギ」にそうした成分的作用があることによります。日本のエキス漢方の中で、黄耆が豊富に入っているのが補中益気湯であるため、東洋医学の理論を知らない医師は、どの患者にもこれを処方してしまうのです。しかし、補中益気湯は「中気下陥」という失調をターゲットにした処方ですから、その失調が現れていない患者には、あまり有効とはいえません。最悪の場合、漢方薬による副作用が出ることさえあるのです。
このほかでは、一部の科学的分析の中で、その有効成分に抗がん作用があるとされるものもよく使われます。とくに、サルノコシカケや冬虫夏草等々の、医薬品に分類されない、健康食品扱いのものが有名です。これらは医薬品ではないことから、現代医学や東洋医学的な知識がなくても販売できるため、補中益気湯と同じように、体質の考慮なしに利益中心で推売されることが多いのも事実です。比較的高額な商品ですので、購入する際には、東洋医学的な知識を持った人に事前に相談することをお勧めします。
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