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婦人科疾患 [貴方の病気のタイプ]


6 月経前症候群 (経前情緒失調)

1) 概略

女性の中には月経期の前になると不快な症状が現れる人がいますが、これが激しいものをP.M.S.=月経前症候群といいます。その激しさには、症状の程度が激しい場合と、日数が長くてつらい場合とがあって、長い人では排卵後すぐに出現して期間が10日ほどに及ぶこともあります。具体的な症状としては、イライラなど情緒の失調による症状が最も多く、このほか、お腹が張って生理が近そうな感じがしてもなかなか始まらない・乳房が張って痛む・頭痛・発熱などがあります。一般には、生理が来て数日すると、その症状は軽減または消失しますが、中には月経後もしばらく続く人もいます。

ここでは、最も多い情緒の失調による症状を中心に、病証タイプや治療を紹介します。

 

2) 発症のメカニズム

基礎知識のカテゴリにある「月経の周期③」で紹介したように、経前期(高温期)になると、前回生理で出血して少なくなった血はすでに回復していて、これが次の生理に向けて女子胞へと集まりつつあります。しかし、月経はまだ始まりませんので、集まった血が中心となって気や津液などを含めた阻滞が起こったり、あるいは全身的な血の分布状況に問題が生じやすかったりすると、情緒の失調が起こると考えられています。

 

3) 病証タイプ

月経前症候群で情緒の失調を起こす人の中で、最も多いタイプが「気滞タイプ」です。このほかに「痰火タイプ」「血虚タイプ」などがあります。

 

①気滞タイプ:ストレスや緊張から肝の疏泄(リラックスを促し気血の流れを伸びやかにする作用)が失調していると、子宮に気血を運ぶ衝任脈の流れがスムーズに行えず、滞りを発生しやすくなっています。そこに月経前になって気血が集まってくると滞りが一層強まります。このとき鬱積した気(気滞)は肝の疏泄を一層悪くして、気分をリラックスさせる作用に影響することで、情緒の異常が出現します。

特徴的な症状には、月経前になるとイライラや怒りっぽさなど情緒の不安定が現れ、月経後は軽減する・お腹が張って生理が始まりそうでもなかなか始まらない・月経前に乳房の張りが強まり痛むなどがあります。また気滞が熱化すると、頭痛・めまいなどが現れたり、経血量が増えて月経周期が短くなることがあります。そのほかの全身症状については、基礎知識の「肝胆の病証タイプ」を参照してください。

 

②痰火タイプ:普段から太り気味でむくみやすいなど痰湿体質の人にストレスや緊張が加わるか、あるいはストレスを感じて飲酒や甘いものなどを食べ過ぎることで起こるタイプです。気分の鬱積と痰湿の鬱積が重なって熱化し、それが精神の中枢である「心神」に影響することで症状が現れます。

特徴的な症状には、イライラしたり抑鬱気味になる以外に、胸中が熱苦しく感じてじっとできない・ひどいときは筋の通らない話をしたり精神が朦朧としたりするなどがあります。そのほか、黄色いおりものが多い・気持ちが悪くなるなどの症状を伴う人もいます。これ以外の全身症状については、基礎知識の「気血津液の実証」を参照してください。

 

③血虚タイプ:普段から精神的に疲れやすかったり思い悩みやすい人に起こるタイプです。これらの特徴を持つ体質の人は、心血という心神を栄養するための血が不足していますが、月経前になって血が子宮に集まると、心血がますます不足してしまうために発症するのです。

特徴的な症状には、胸やみぞおちがもやもやして落ち着かない・気持ちの起伏が激しくよく泣き笑いをする・表情が恍惚となる・不眠などがあり、心身の疲労や食欲の減退などがあった月は悪化しやすい傾向にあります。月経の特徴には、一般に経血の色が淡い・経血量が少ない・生理が遅れがちなどがあります。これ以外の全身症状については、基礎知識の「気血津液の虚証」を参照してください。

 

 

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